star!!からshine!!、そしてBEYOND THE STARLIGHTへ~少女たちは進化する~
BEYOND THE STARLIGHTを初めて聴いた時の正直な感想は、「リズム感や雰囲気は好きだけど、何か心に訴えかけるものに欠けるなあ」でした。
その理由はおそらくタイトルであるBEYOND THE STARLIGHTと曲中で繰り返される「TO BE A STAR」というフレーズの意図するところの違いがあまりハッキリしないように思えたためでしょう。
THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 4thLIVE TriCastle Storyの神戸公演、「starlight castle」の全日程が終了した今、僕はハッキリと、そして、絶対の自信を持ってこう言うことができます。
「BEYOND THE STARLIGHTはstar!!、shine!!の系譜として作られた非常にメッセージ性の強い楽曲であると同時に、アイドルマスターシンデレラガールズの楽曲の中で僕が最も好きな曲です。」
たった数日で僕の中でのこの曲の位置づけがここまで大きく変わった直接の原因はstarlight casting1日目で1位に選ばれた城ヶ崎美嘉役の佳村はるかさんの思い、starlight casting2日目で1位に選ばれた星輝子役の松田颯水さんの涙を目の当たりにしたことでしょう。
二人のキャストさんの口から語られる「1位になること」が意味するもの、その大切さを聞き、そして2日間の公演の両方においてアンコール後最初の曲として歌われた「BEYOND THE STARLIGHT」を生で体験したことにより、僕の中で離散的に存在していた点と点とがめまぐるしい速さで繋がって行きました。
つい数分前、この感動を是非どこかに記録しておきたいと思い、急遽ブログとしてまとめる事に決めました。昨日の今日なので自分の中であたためる暇がなく、おそらく非常に読みづらいものとなってしまいますが、一人のオタクのメモ程度として参考程度に読んでいただければ幸いです。
はじめに、僕がBEYOND THE STARLIGHTをstar!!、shine!!の系譜として考えるようになった根拠をお話しします。
まずはそのタイトルですね。starlight、star、shine。どれも星や光を連想させます。
そしてその歌詞に見られる共通点、対称点の数々。ここでズラッと歌詞を並べたいところなのですが、著作権的な問題があるような気がするので(僕は法律関係には暗いのでよく知りませんが念のため)一部を引用するに留めます。皆様におかれましてはお手持ちのstar!!、shine!!の歌詞カードを手にお読みいただければと思います。
star!!は、アイドルとして活躍する友人たちの眩しさに気後れしながら、いつかは自分も活躍したいと夢見る少女の歌です。
慣れないこのピンヒール
10cmの背伸びを
誰か魔法で変えてください
ガラスの靴に
という歌詞や
私どうかな?イケてる?
祈るようなキモチ
そして、
カボチャの馬車はないけど
キミがここにいるなら
ねえ行けるよね?新しい世界
という歌詞はアイドルとして活動することに大きな不安を抱き、「キミ」(これはプロデューサーであり、ファンであると考えられます)に頼り、自分はアイドルとして輝いているか問いかける少女の姿を描いています。
一方shine!!は、star!!においては眩しいだけの存在だった仲間に追いつき、そして「新たな光」の存在に気づくまでの軌跡を綴った歌です。
となりにいる仲間の瞳 煌めくDiamond
そして泣き笑い つながるスマイリング
そう 出会ったあの日も 眩しかった微笑み
だけど今見ている瞳は ねっ もっときらきら輝くよ
ではstar!!からどのようにしてshine!!へと辿り着いたのでしょうか。
この問いの答えはすべてアニメ アイドルマスターシンデレラガールズの中にあります。なんだその投げやりな回答は、と思われてしまうかもしれませんが、僕は大真面目です。
あのアニメは、島村卯月という一人の少女を通して「憧れ」からの「挫折」、そしてそれを乗り越えて「希望」を胸に新たなスタートを切るアイドルの姿を描き出した本当に本当に素晴らしい作品です。僕がアニメアイドルマスターシンデレラガールズの感想ブログを書かないのは、わざわざ僕が補わずともあのアニメの中にすべてが詰まっているからです。
少し話が横道に逸れましたが、とにかくstar!!からshine!!へと続く一本の道は見えましたでしょうか。そしてここからが本題です。この一本の道の続き、shine!!で見つけた「新たな光」の正体こそが「BEYOND THE STARLIGHT」のなかに隠されているのです。
以下ではライブで初公開となったBEYOND THE STARLIGHT二番の歌詞の考察も登場しますが、これはtwitterに掲載されていた「暫定版(複数の人が聴いた内容を擦り合わせて作られたもの)」を参考にさせていただきました。
初めに語るべきは冒頭で触れた「BEYOND THE STARLIGHT」と「TO BE A STAR」についてでしょう。
まずはその準備を行いたいと思います。
皆さんは「star」という英単語の正確な意味をご存知でしょうか。googleで調べるとこのような答えが返ってきます。
star
(staː) noun
- the fixed bodies in the sky, which are really distant suns.
- any of the bodies in the sky appearing as points of light.
- an object, shape or figure with a number of pointed rays, usually five or six, often
- a leading actor or actress or other well-known performer eg in sport etc. a film/television star; a football star; (also adjective)
僕も調べてみてビックリしたのですが、starの第一義的な意味は「fixed bodies in the sky」、つまり空に浮かぶ恒星のことだけを指すものらしいです。(一応日本語でも星の意味を調べましたがやはり、狭義では恒星だけを指す場合があると書いてあります。)
このことも踏まえてBEYOND THE STARLIGHTの歌詞を見てみると、star!!やshine!!と同系統のコンセプトでありながら、その言葉選びは前者二つとは一線を画していることがわかります。
まず、「光」という単語。star!!においてアイドルとしての活躍は、常に「輝く」と形容されていました。「光」はあくまで、遥か先にあるものであり、目指すべきものに過ぎません。shine!!においても仲間の瞳は「輝く」あるいは「煌く」ものであり、新たな「光」は、少女たちが「会いに行く」ものでした。
ところがBEYOND THE STARLIGHTにおいて「輝く」という表現は一切使われていません。代わりに使われているのが「光る」という動詞。この曲において光は、目指すものでも会いに行くものでもなく自ら放つものなのです。
そしてstar!!やshine!!でたびたび登場する「キミ」あるいは「君」という単語もBEYOND THE STARLIGHT には一度たりとも登場しません。代わりにに幾度となく登場するのが「自分」という単語。
君がいるから輝いていた少女はいつしか「自分自身」で光ることを望むようになったのです。
以上を踏まえて、僕は一つの結論を導きました。その前に見ていただきたい画像があります。
これらの画像はゲーム内で開催中のイベントのコミュの一部です。莉嘉のこの発言は僕が導いた結論を端的に表しています。以下、詳しく説明します。
アイドルというのは、ファンやプロデューサーの承認のもと成り立っているのが常識です。アイドルマスターというゲームそのものがそういうコンセプトで作られていますし、ここら辺は以前僕が書いたブログ(オタクはなぜアイドルに惹かれるのか)でも少し触れています。そして、先ほど紹介したstar!!の歌詞にもこのことが読み取れます。「私どうかな?イケてる?」という少女の問いにプロデューサーやファンが答える。そうして初めて少女は自信を持てる。
少女は、ファンが持つサイリウムの光を反射して初めて「輝く」のです。
しかし、少女たちはこの一年、スターライトマスターシリーズとしてゲーム内でいつもとは違うメンバーとグループを組みステージをこなしていく中で新たな自分の可能性に気づき始めます。自分の中にある光──それはつまり、shine!!の時にはぼんやりとしたものでしかなかった「新たな光」の正体、自ら「光る」本来の意味での「STAR」です。
そう、BEYOND THE STARLIGHTは、ファンやプロデューサーの振るサイリウム(=承認)を反射して輝くSTAR LIGHTであることを超越し、自分自身の力で「光る」STARになろうという少女たちの決意を歌った歌なのです。
人間というものは普通、承認欲求を行動の第一原理にしがちです。誰かに認められるのは気持ちがいい。当たり前です。これは当然アイドルにも当てはまります。ファンやプロデューサーが喜んでくれるようなことをついやってしまう。ですが、それを続けていればいつかは自分を見失います。本当にしたいことは何であるかを忘れてしまう。
だからこそ、自分の力で光る必要があるのです。人に認められるためではなく自分が目指す自分になるためにアイドルとしての活動を行う。それはもちろん容易なことではないです。誰かに褒められればそれでよしとはいきません。誰が見ても納得せざるを得ないような証拠が必要になります。only one ではなくnumber one にならなければならない。BEYOND THE STARLIGHTの歌詞からはそんな強い覚悟を感じます。
では、自分だけの力で頂点を目指すBEYOND THE STARLIGHT において仲間は、どんな存在なのでしょう。
ぶつかって 火花が散って星座になって
永遠に語り継がれる 僕らのファンタジー
これは、二番の歌詞です。そして
これは先述のコミュにおける奈緒の発言の一部。ネットでも話題になっていましたね。
star!!では自分の前を走り、shine!!では共に走る存在であった仲間は、BEYOND THE STARLIGHTにおいては切磋琢磨するライバルとなるのです。友情というのはどんな状況下でもそれぞれ違った美しさを見せるんですね...
BEYOND THE STARLIGHTには「ゴールのない世界」「答えのない世界」という歌詞が登場します。これはもちろん、アイドルの世界です。アイドルに正解はないし、だからこそ完成系もない。少女たちはガムシャラに突き進む他ありません。しかしだからこそ、無限の「夢がある」。
時には目標に、時には支えに、時にはライバルになる仲間たちと共に、少女はどこまで羽ばたいていくのでしょうか。もう、僕たちには全く予想ができません。
ただひとつわかるのは、さいたまスーパーアリーナでの4thライブ、そしてその先の未来において彼女たちは、まだ僕たちが見たこともない綺麗な色で「光る」であろう、ということだけです。(完)