kramija’s blog

アニメの女の子と現実のオタクの話をします。Twitter:Pasupu_otaku

空想世界の感情にまつわる力学系について

人間と人間の間に成り立つ感情の相互作用を力学におけるn体問題として考えてみたいと思います。空想世界における感情の相互作用を十分な精度で近似するために必要なnの値は現実世界におけるそれに比べてはるかに小さく済むでしょう。現実世界を生きる人間たちが、良かれと思って弾いた球が巡り巡って予想外な結果(時としてそれは損害という形で自らに返ってくる)を引き起こす、いわば"カオスな力学系"で生きることに疲弊し、弾いた球が予測可能で規則的な振る舞いを見せる空想世界の力学系で安息を得ることが多いのも頷けますね。

もちろんあえて複雑な感情の体系用意する空想世界も多く存在し、その時人々は現実世界でも起こりうる人間関係の挙動に息を呑み、胸を打たれ、笑い、涙を流します。しかし大半の、特にキャラクターの日常にスポットを当てたアニメにおいて感情の体系は非常にシンプルです。それゆえ視聴者もあるキャラAからの感情の入力に対するキャラBの感情の出力にのみ集中することができ、背後にある伝達関数について脳の容量を割く必要がない。

 ところが時として、逆にその省略された伝達関数について様々に想いを馳せる二次創作的な解釈が人気を博すこともあります。「このキャラは実は〜で、云々」「きっと○○のことを心の底では××だと思っていて、云々」

これらの解釈は基本的に現実世界と同程度な複雑さを持った力学系を前提として創作されます。「空想世界におけるある入力を現実世界で行ったらどうなるか」という空想はしばしば破滅的な結果をもたらし、それは空想世界において予想される出力とは大きく異なり、そのギャップを見て人々は喜ぶ。

柳田理科○という人の書いた空想科○読本という本を読んだことがある人も多いと思います。これは空想世界における(先ほど用いた比喩的でない、原義の)力学系で起こる様々な現象を、現実世界の力学系において実践したらどんな破綻が起きるか、ということを面白おかしく解説した本で、僕も理科を少し学んだ小学生くらいの頃によく読んでいました。本格的に物理や化学、数学を学んでみると空想科学読○の中で展開される理論は非常に乱雑で、時として明らかな誤りを含んでいたことに気づき今となっては全く興味を消失してしまったわけですが、先ほど述べた二次創作的な解釈の方法はこの空○科学読本的な性質を少なからず備えていると僕は思うわけです。

空想世界で何の不便・不自然さもなく成り立っている人間関係を取り上げて「○○は発達障害」「○○は同性愛者(※注1)」などと、アニメキャラに現在現実世界で何かしらの「不便さ」を持った性質を当てはめる遊びを見るのは正直不快で、困ったなあと思っています。それも空○科学読本のくだらなさになんてとうの昔に気づいているような人々が、感情分野に関しては未だに空想科学読本してるわけで、これは困りものです。まあ困ったなあというただそれだけの話でこの記事は終わるんですが、はい、まあ、困ったなあ。(みんなアニメは素直に見よう!)


※注1

お分かりかと思いますが、同性愛者を批判する意図は全くないです。ただアニメキャラを同性愛者判定するオタクが多くないですか?ということを言いたかっただけです。別にその空想世界において同性愛と異性愛の区別が明示的に存在しないならわざわざこっちの世界の言葉である同性愛者という言葉を当てはめなくていいじゃん。